ISO9001の問題点(1) 難解なISO用語

実際にISO9001の原文をご覧ください。

ISO9001:2008 7.1 製品実現の計画
「組織は、製品実現のために必要なプロセスを計画し、構築しなければならない。製品実現の計画は、品質マネジメントシステムのその他のプロセスの要求事項と整合がとれていなければいけない。…」

ISO9001:2008 7.2.2 製品に関連する要求事項のレビュー
「組織は、製品に関連する要求事項をレビューしなければならない。このレビューは、組織が顧客に製品を提供することに対するコミットメント(例 提案書の提出、契約又は注文の受諾、契約又は注文への変更の受諾)をする前に実施しなければならない。…」

主張はいたって明快でシンプルなのに、なぜ、こんなにまわりくどい意味不明な言い回しなのか?

ISO9001は国際標準規格と呼ばれるくらいですから、原文は英語で書かれています。

日本語に翻訳する際は、翻訳者の主観が入ることで規格本来の主旨から逸脱した内容になるのを防ぐために、意訳を極力排除しています。

その結果、翻訳ソフトで訳したような、「これが日本語か?」と首をかしげたくなる文章になっているのです。

残念ですが、ISO9001は徹頭徹尾こんな言い回しで書かれています。

ISO9001規格の内容を十分に理解しないままマニュアルを作成すると、難解なISO用語だらけのちんぷんかんぷんなマニュアルが出来上がってしまいます。

ISO9001規格で要求されていることの真意を理解し、それが自社の業務のどの部分に該当するかの関連付けが十分にできていないので、具体的な誰がどんなアクションを起こせばよいのかはっきりしないマニュアルになってしまうのです。

審査を受ける際も同様です。制限時間内に審査を終えるために、ほとんどの審査員がこれらの難解なISO用語をそのまま使って質問してきます。

それでなくても審査の際のプレッシャーは相当なものなのに、審査員の発する専門用語が頭の中を真っ白にします。

本当はきちんと実施している項目について審査でダメ出しを受けるといったことが日常的に起きるのは、これらの専門用語が審査員とお客様との円滑な意思疎通を妨げているからです。

そのため、一般的なISO9001のコンサル現場では、これらの難解なISO用語や規格の内容をお客様に理解してもらうことに重点を置いていて、実際にかなり多くの時間が割かれてしまいます。

ISO9001の目的は、仕事のやり方を継続的に改善していくことによって、製品やサービスの品質を確保することです。

本来ならば、仕事のやり方の改善につながるアドバイスまで行うことがコンサルタントの役割ですが、多くのISOコンサルタントはそんな面倒なことに首を突っ込むような真似はしません。ISOがいとも簡単に取得できることをアピールする余り、ISO用語の解説に終始しています。

ISO9001規格の内容や用語の意味を理解していれば、とりあえず認証取得という最低ラインの目標まではお客様を誘導できるので、数多くのISOコンサルがISO用語の解説者という地位にしがみついています。

ISOコンサルに支払っている高額なお金はたいていの場合、コンサルティング料金ではなく、ISO用語の翻訳料金に過ぎないのです。

ISO9001の問題点(2) 「取得だけが目的」という病

トップページの『ISOが役に立つ会社&役に立たない会社』でも述べましたが、ISOは特別なことを要求しているわけではありません。日本企業であれば、普段からやっているようなことばかりです。具体的にどう取り組むかも、その会社の判断に委ねられています。

先ほどのISO9001の原文をもう少しわかりやすく解説してみましょう。

ISO9001:2008 7.1 製品実現の計画
「組織は、製品実現のために必要なプロセスを計画し、構築しなければならない。製品実現の計画は、品質マネジメントシステムのその他のプロセスの要求事項と整合がとれていなければいけない。…」

【解説
「製品を作ったり、サービスを提供する際には、あらかじめ計画を立てましょう。計画を立てるときは無理のない内容にしてください」

ISO9001:2008 7.2.2 製品に関連する要求事項のレビュー
「組織は、製品に関連する要求事項をレビューしなければならない。このレビューは、組織が顧客に製品を提供することに対するコミットメント(例 提案書の提出、契約又は注文の受諾、契約又は注文への変更の受諾)をする前に実施しなければならない。…」

【解説】
「お客様から注文を受けたら、返答する前に注文の内容を確認してください」

「え、えっ…」と思われますよね。実は、このレベルなんです、ISOって。

さらに、どう取り組むかも自由です。基準値や規格値といったものは一切要求されません。

大規模な業務基幹システムで生産管理を行うことも、ホワイトボードに今週の予定を記入することも、どちらも「計画を立てる」と解釈して構いません。

お客様から注文を受けたら、ファミレスや居酒屋のように注文を復唱してもいいですし、営業マンが商談の中で確認してもいいでしょうし、技術者が発注者から預かった図面や仕様書に目を通すといったことでも構いません。

どのような方法をとるかは、あなたの会社が決めればいいのです。

同時にここが、ISOが役に立つか役に立たなくなるかの分かれ道でもあります。

無条件に現状維持の仕事のやり方を選ぶのか?

あえて、自社の短所を補ったり、長所をさらに生かすようなやり方を選ぶのか?

たいていの会社さんは、ISOを取得しようと考えるときに、自社の課題や長所といったことは頭にありませんので、前者を選びます。

たいていのISOコンサルも、いともたやすくスピーディーにISOが取得できることをアピールするために前者を強調します。

審査員はISOの要求を満たしているかを判定するのが役目です。○か×かを判断するだけで、○を◎にする方法は教えてくれません。コンサルのように助言や指導を行うことは禁止されているからです。

かくしてマークだけで何の役にも立たないISOが世の中に蔓延するようになりました。

「ISO9001の問題点」のまとめ

1.難解なISO用語の意味さえわかってしまえば、あとはそれを自社に当てはめて解釈するだけで、ISO9001は取得できてしまう。

2.したがって、通常のISOコンサルはISO用語の解説に安住してしまう。

3.ISO9001で要求されることは、日本企業なら当たり前のようにやっていることが多い。簡単には取得できる分、経営上のメリットはあまりない。

4.結論として、ISOコンサルに依頼しても、取得以上の成果が得られることはほとんどない。

では、ISO9001を取得して後悔しないためには、どうしたらよいのでしょうか?

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