社長さんが、ISOに積極的に参画しない会社さんは、ほぼ例外なく失敗します。
社長さんが、ISOに関わりを持ちたがらず、ISOに付随する面倒なことを嫌がり、ISO管理責任者やプロジェクトメンバーに取得活動を押し付けるようなことがあれば、ものの見事に失敗します。
仮に取得できても、あとが続きません。
火を見るより明らかというのは、まさにこのことです。
社長さんがISOを面倒に思ったり、それが態度に出たりすると、瞬く間に社員さんに伝染します。そのような社長さんの姿勢を社員の皆さんは一発で見抜きます。
「ISOのことは、プロジェクトの連中に任せておけばいいのさ…」といった雰囲気が社内を覆います。
こうなってしまうと、ISO管理責任者やプロジェクトメンバーに全ての作業が集中します。彼らだけで、ISOを取得する格好になります。ひどい場合には、負荷がかかり過ぎて、退職者が出たりします。
私にも、苦い経験があります。恥を忍んでお話します。
とある会社さんの取得活動をご支援させて頂いた際のお話です。
最初は乗り気だった社長さんが、その内にプロジェクトの打ち合わせを欠席するようになりました。
「社長は外に営業に出て忙しいので…」という理由でした。それほど規模の大きくない会社では、社長自らトップセールスというのは珍しくありません。
私も、その理由につい甘えてしまい、社長さん抜きでプロジェクトを進めました。ただ、進捗状況の報告書だけは毎回きちんと提出するようにはしていました。
しばらくすると、プロジェクトメンバーの雰囲気がおかしいことに気づきました。
どうやら、社長さんが役員陣に「あとは全てお前達に任せた」と言い放ったらしいのです。
ISOでは、社長さんの代わりに管理責任者を選任して、ISOの実務を行わせることが規定されていますが、その一方で社長さんに最低限やってもらわなければいけないことも決められています。
ISOでどういった会社を目指すのかをビジョンにして、それを社員さんに周知させたり、ISOに必要な経営資源を用意したり、運用状況を総括的に振り返って今後の方針を打ち出すといったことです。
結果的にそれらを全てをISO管理責任者である社長のご子息に任せてしまうことになってしまいました。
いくら後継者育成という目的があっても、これでは管理責任者の荷が重過ぎます。
社長の代役を古参の役員さんにお願いしましたが、引き受けてくれる人はいませんでした。
それでも、何とかプロジェクトは進行し取得にこぎつけましたが、1回目の定期審査を迎えることなく認証の維持を断念なさいました。ISOを返上したのです。
管理責任者に負担がかかりすぎて、彼が根を上げてしまったのが理由です。
私があの時すべきことは、社長さんに報告書を提出することではなく、首根っこを引っ張ってでもプロジェクトの打ち合わせに参加させることでした。
いや、それ以前に契約の段階で社長さんにISO上の経営者の責務をしっかりお伝えした上で、コンサルティングをお引き受けすべきだったのです。
今でも本当に悔やんでいます。
ISOの取得をなさるおつもりでしたら、以下の3点を守るべきです。
1.社長さんは、ISOの取得がわが社の至上命題であることを社員の皆さんに十分アピールしてください。
2.社長さんは、ISO管理責任者に十分な権限を与えてください。そして、管理責任者やプロジェクトメンバーに協力しないとただでは済まないことをしっかり社員さんに認識させてください。
3.社長さんは、どんなに忙しくても、心の中では面倒だと思っても、プロジェクトの打ち合わせには積極的に参加するようにしてください。毎回は無理でも、2~3回に一ぺんは必ずです。
そして、管理責任者やプロジェクトメンバーに対するねぎらいの気持ちを忘れずに。
彼らは、お忙しいあなたの代わりに、あなたが“会社を操縦する仕組み”を作ってくれているのですから。
これさえ守っていただければ、あとはコンサルタントがうまくフォローしてくれるはずです。
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