当社代表のISOとの格闘ヒストリー ~その1~

はじめまして。成功するISO/(有)岩崎経営 岩崎です。自己紹介を兼ねて、私とISOとの出会いについてお話します。

20世紀末のお話です。当時勤めていたコンサル会社でISO9001の認証取得準備をしていたときのことです。

現在のISO9001の最新版は2015年版ですが、その前の2008年版、さらにその前の2000年版、そのまたさらに前の1994年版だった頃のエピソードです。

ようやく北海道でも、建設業を中心にISO9001の認証ブームに火が点こうかという頃でした。

「どうせお客様にコンサルティングを行うのなら、自社で取得した方が説得力があるだろう」

この社長の一言で始まった取得活動でしたが、コンサルタントとは言っても、ISOについてはズブの素人集団。

文書サンプルなんてものは、ほとんど出回っていない頃です。ましてやコンサル会社の文書事例なんて、今でもお目にかかれるものではありません。

仕方がないので、同業のコンサル会社から、それも建設業の文書サンプルを拝借してISO9001の仕組み作りが始まりました。

建設業も、コンサル業も、プロジェクト単位で仕事を進める点は同じだろうという乱暴な理由からです。

コンサル会社はもともと自己主張の強い人間の集まりです。

「品質計画って何だ?」
「指導計画書のことじゃないか?」
「いや、違う。お客さんのところに持っていく提案書だ」
「コンサルタントの質も品質の計画に関係しないか?」
「それは教育・訓練のところで考えればいいだろう!」

ISO9001規格の解釈ですら上を下への大騒ぎです。いたずらに時間だけが流れて行きます。

さらに文書の作成段階になると、もう大変。

社員が10名もいない小さな会社で、我々は従業員数千人規模の大手ゼネコンの品質文書を参考にしていたのですから、身の丈に合わせるのも一苦労です。

「ウチみたいな小さな会社で、この指示・連絡書っているのかな?」
「とりあえず入れとけ!不適合になったら大変だ(脂汗)」
(※ 不適合…ISOのルール違反。審査員からイエローカードが出されます。)

“人様に教える立場の者が不適合を指摘されるようなことは、断じて避けなければならない”

社長からそう厳命されていた我々推進メンバーは、こともあろうに不適合の撲滅作戦を遂行していたのでした。

今となっては笑い話ですが、当時の我々は刻々と時間が過ぎ行く中、不適合の芽を摘むと称しながら、山のような意味のない文書を作り上げていったのです。

さて、こうして出来上がった品質システムですが、余計な規定ばかり増えて、どこに何が書いてあるのか逆にサッパリわからない状態でした。

日常の運用も、似たような様式に同じような内容を何度も書くということが繰り返され、周囲からは当然大ブーイング。

そんなときでも、我々は、

「これが、ISOの醍醐味だ!」

「苦労して運用してこそ、ISOの価値がある!」

と、根拠のない反論で押しては寄せる非難を切っては捨てていました。(不適合を出して、社長に叱られるのが怖かっただけなのですが…)

そんな混乱が続きながらも、何とか審査当日を迎えることができました。

審査自体は思っていた以上にスムースに進行し、白鳥が横切る静かな湖面のような審査に、かえって拍子抜けしました。

審査が終わって、これまでの苦労を走馬灯のように思い返していたのもつかの間、審査報告書を書き終えた審査員がアッサリ一言。

「不適合は2件です」

「えっ!?」

“不適合ゼロ”運動を展開していた我々に突きつけられた2件の不適合…。それが意味することは…。

せめて観察事項にしてもらえないかと必死に懇願するもむなしく、我々の不適合撲滅作戦はあえなく失敗に終わりました。

事情を説明すると、その心優しき審査員は、
「それでは、私から社長さんにご説明しましょう」とニッコリ。

我々はクビを洗って最終会議に臨むことになりました。

審査員いわく、

  • 不適合が不適合としてきちんと処置(是正)されていれば、ISO9001の審査登録自体には何ら影響がない。
  • 100%完璧なシステムなど存在しない。大切なことはシステムの不備やムダを見つけて改善していくことであり、それによってシステム全体のパフォーマンスが向上する。
  • この年末に発行される2000年版のISO9001では、この考え方が色濃く反映されている。

そんな内容だったと思います。

…おかげさまで我々推進メンバーは無事会社に残ることができました。

それにしても、これまでの我々の苦労は一体、何だったのでしょう?

「詳しく書いておかないと、審査のときにツッコまれるぞ!」
「とりあえず書いておけば、不適合にはならんだろう…」

我々に残されたのは、こうして出来上がった一挙手一投足までがんじがらめの莫大な量の文書でした。

ISOは自分たちの仕事をサポートするためのツールだという認識があれば、こんな事態にはならなかったでしょう。

“自分がお客様にコンサルをするときには同じ轍は踏むまい。”

“小さな会社でも無理なく運用できるシンプルなISO”を目指す。”

そう固く誓いをたてました。

「当社代表のISOとの格闘ヒストリー ~その2~」へ続く…