当社代表のISOとの格闘ヒストリー ~その2~

「当社代表のISOとの格闘ヒストリー ~その1~」からの続き…

ISO9001取得コンサルの最初のお客様は土木建設業の会社さんでした。

実は、私、建設業のお客様はこのときが初めて。社員さんの口から次々飛び出す業界専門用語にほとほと泣かされました。

一応わかったフリをしながらも(しっかりバレていましたが)、社に戻ってから建設・土木用語辞典に首っ引きです。

その頃はISO9001規格が2000年版に切り替わって間もない頃で、規格の解釈がまだまだ定まっていませんでした。

ましてや、建設業のお仕事の形態は一種独特です。
下請・ジョイントベンチャーといった重層的な契約関係、それに伴う役割分担…
日々の品質管理や出来形管理…

「一体どこまでISOの仕組みの中に取り入れるべきなのか?」
眠れない日が続きました。

そんなときこそ初心の誓いに立ち返って、

  • お客様企業の仕事の流れ、仕事のやり方を最優先する。
  • ISO用語は極力使用しない。
  • 規格要求以外のルールはバッサリ省く。

に徹底的にこだわりました。

この結果、

  • ISO用語を知らなくても、
  • 普段の業務の中で完結できる、
  • 余計な書類がほとんど発生しない、

非常にコンパクトなISOの仕組みが完成しました。

また、「気が抜けるほどあっさりとISOが取得できる」という口コミが広がり、たくさんのお客様を紹介して頂きました。

中には、「何もしなくてもISOが取れる」と勘違いなさる方もいらっしゃいましたが…。

お付き合い頂いたお客様からは、「やってみると、案外簡単だね」といったお言葉も聞かれるようになり、初心の誓いに誤りはなかったと確信するようになりました。

以降、ISO取得支援のキャリアを順調に積み上げていきましたが、この時はまだ、その初心の誓いがいかに独りよがりな考えに過ぎなかったのかを知るよしもなかったのです。

そんなある日、ISO9001取得後のフォローアップでお邪魔した建設会社さんでの出来事でした。

私 「どうですか、社長。ISOの運用はだいぶ慣れてきましたか?」

社長「ああ、問題なくやってるよ」

私 「何か困ったことはありませんか?」

社長「特にはないけど、あえて言えば、問題がないのが困ったことかな…」

私 「問題がないことが困ったこと!?」

社長「何も変わらないんだよ、ISOを取っても。おかげ様で本業に支障なく楽にISOは取れたよ。でもね、それだけなんだよ」

社長「不具合が減ったとか、手戻りが少なくなったとか、はっきりした成果が見えないんだよね」

社長「目に見える成果といえば、名刺に刷られたこのISOマークぐらい。これって贅沢な悩みなのかな…」

私 「…」

後頭部を石で殴られたような衝撃が走りました。社長のその問いかけに返す言葉がありませんでした。

それまでお客様に余計な手間をかけさせずにISOを取得してもらうことが、自分の仕事だと思っていた私は、恥ずかしさで胸が一杯になりました。

がっくり肩を落とし、うなだれて帰路につく私の頭に浮かぶのは、
「俺がやっていたことは、お客様にISOマークを売り付けていたに過ぎなかったのだ」
という無力感だけでした。

会社のどんな所をどう変えたかったのか?社長と私は何度も話し合いを重ねました。

工事が終わってみるまで黒字か赤字がわからない、事前の手が打てずに困っていたので、タイムリーに粗利を把握できるよう原価管理の方法を見直しました。

「言ったはず」「聞いてない」といったコミュニケーションのトラブルが多発していたため、指示の出し方・受け方を工夫しました。

その他にも仕事を進める上で困っていることを、社員の皆さんでざっくばらんに話し合ってもらいました。出てきた意見や要望を少しずつISOの仕組みに取り入れていったのです。

こうした活動が半年ほど続いた頃、社長がニッコリ微笑んで言いました。

「最近、会社を経営している実感というか手ごたえを感じるんだ。社員のみんなも頑張ってくれているし。みんな、前より明るくなったと思わない?」

このときハタと気づきました。
私の仕事は、会社さんとのかかわりを通して、社長が会社を経営する喜びを見つけ、社員の皆さんが楽しく仕事をするお手伝いをすることなんだと。

それからというもの、ISOで会社さんをハッピーにするにはどうしたらよいかを探求しました。

ISOの書籍や文書事例集を片っ端から読みあさりました。いろいろな業種業界における仕事の進め方を勉強しました。

審査会社からの紹介でISOを導入してうまく行っている会社さんにお話を聞きに行きました。

ISO相談会を開催し、実際にISOの運用で困っている会社さんの悩みを聞かせてもらいました。

QCやTQM、その他諸々の現場改善手法の研修に参加し、技術の習得に励みました。

ISO以外でも、経営改善に成功した企業の手法を収集し、中小企業にも応用できそうなものを探しました。

これは!と思った手法は実際にお客様に試していただきました。うまく行ったもの、そうでないものもありました。

こうして得られた貴重な知識や経験をもとにして、ISOのみならず、人事評価制度や目標管理制度といった分野でもコンサルを行うようになりました。

まだまだ発展途上です。いえ、これからも永遠に発展途上です。

皆様と一緒に成長し続けられればと考えております。

「ウチの社員は本当によくやってくれるんだよ」と笑顔で目を細める社長を日本中に増やすのが私の使命です。