ISO13485:2016「4.2 文書化に関する要求事項」の解説

ISO13485:2016 4.2 文書化に関する要求事項

4.2.1 一般
 品質マネジメントシステムの文書(4.2.4参照)には,次を含める。
a) 文書化した,品質方針及び品質目標の表明
b) 品質マニュアル
c) この規格が要求する文書化した手順及び記録
d) プロセスの効果的な計画,運用及び管理を確実にするために必要であると組織が決めた記録を含む文書
e) 適用される規制要求事項によって規定された他の文書

4.2.2 品質マニュアル
 組織は,次を含む品質マニュアルを文書化する。
a) 品質マネジメントシステムの適用範囲。除外及び/又は不適用がある場合には,その詳細及びそれが正当であるとする理由
b) 品質マネジメントシステムについて文書化された手順又はそれらを参照できる情報
c) 品質マネジメントシステムのプロセス間の相互関係に関する記載
 品質マニュアルには,品質マネジメントシステムで使用している文書体系の概要を記載する。

4.2.3 医療機器ファイル
 組織は,それぞれの医療機器の型式又は医療機器ファミリに対して,この規格及び適用される規制要求事項への適合を立証するために作成した文書を含むか又は参照する一つ以上のファイルを確立し,維持する。

 このファイルの内容には次を含むが,これに限らない。
a) 医療機器の一般的記載,意図する用途・目的及び全ての使用説明を含むラベリング
b) 製品仕様
c) 製造,保管,取扱い及び配送の仕様又は手順
d) 測定及び監視手順
e) 適切な場合,据付けに対する要求事項
f) 適切な場合,サービス手順に対する要求事項

4.2.4 文書管理
 品質マネジメントシステムで必要とする文書は管理する。ただし,記録は文書の一種ではあるが,4.2.5に規定する要求事項に従って管理する。

 文書化した手順は,次の活動に必要な管理を規定する。
a) 発行前に,適切かどうかの観点から文書をレビューし,承認する。
b) 文書をレビューする。また,必要に応じて更新し,再承認する。
c) 文書の現在の改訂版の識別及び変更の識別を確実にする。
d) 該当する文書の適切な版が,必要なときに,必要なところで使用可能な状態にあることを確実にする。
e) 文書が読みやすく,容易に識別可能な状態であることを確実にする。
f) 外部で作成され,組織が品質マネジメントシステムの計画及び運営に必要と判断した文書を明確にし,その配付の管理を確実にする。
g) 文書の劣化又は紛失を防ぐ。
h) 廃止文書が誤って使用されないようにする。また,廃止文書に適切な識別をする。

 組織は,その決定の基礎となる関連する背景情報を入手できる立場にある,最初に承認した部署又はその他の指名した部署が,文書の変更をレビューし,承認することを確実にする。

 組織は,廃止した管理文書の少なくとも一部を保管しておく期間を定める。この期間は,その医療機器の製造及び検査に使用した文書が,少なくとも組織が定めたその医療機器の寿命の期間は入手できることを確実にする。ただし,この期間は,結果として得られる全ての記録(4.2.5参照)の保管期間又は適用される規制要求事項によって定められた期間より短くしない。

4.2.5 記録の管理
 要求事項への適合及び品質マネジメントシステムの効果的運用の証拠を示すために,記録を作成し,維持する。

 組織は,記録の識別,保管,セキュリティ及び完全性の維持,検索,並びに保管期間及び廃棄に関して必要な管理を規定するために,手順を文書化する。

 組織は,適用される規制要求事項に従い,記録に含まれる機密健康情報を保護するための方法を規定し,実施する。

 記録は,読みやすく,容易に識別可能で,検索可能とする。記録の変更は,識別可能とする。

 組織は,少なくとも自ら定めたその医療機器の寿命に相当する期間,又は適用される規制要求事項で規定された期間,記録を保管する。ただし,この期間は,組織が医療機器をリリースしてから2年間より短くしない。

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解 説

【4.2.1】
a)~d)を文書にしろと言っています。電子媒体でも構いません。図表、イラスト、写真、音声でも結構です。

このISO13485規格を読み進めると、”~を文書化する”とか、”~記録を維持する”といった表現が頻繁に出現します。

“~を文書化する”→(仕事のやり方についての)“文書”を作成する(4.2.4参照)
“~記録を維持する”→(仕事をやった証拠として)“記録“を作る(4.2.5参照)

という意味です。

“文書”は、仕事のやり方が変更になれば、改訂されます。
“記録“は、仕事の結果を記入したものなので、改訂は原則ありません。中味を勝手に変更すれば、「改ざん」になります。

【4.2.2】
a) について、
ISO13485 でどこまでの範囲を管理するか決めて、品質マニュアルに記載してください。範囲には、「製品」の範囲と「場所」(支社・支店、工場等)の範囲があります。

個々の要求事項について、自社に合わないものがあれば除外する旨とその正当な理由を品質マニュアルに記載してください。

例)当社は薬機法で規定する販売業なので、医療機器の設計業務は存在しない。従って、7.3「設計・開発」は適用除外とする。

規格中に、“~手順を文書化する”という表現が至る所に出現します。これについては、だれが、いつやるのか、手順を決めて文書にします。b)は、その手順がどこに記載されているかの参照情報を品質マニュアルに載せておけという意味です。

c)は、4.1で説明した「品質保証体系図」を使って構いません。

【4.2.3】
“医療機器ファイル”とは、「製造標準書」のことです。
“ラベリング”とは、機器の本体に添付するラベル、包装に表示する注意書き、取扱説明書といったものを指します。

【4.2.4】
ここでいう“文書”とは、先述の通り、(仕事のやり方について書かれた)“文書”のことです。

a)、b)について、
“文書”は、仕事のやり方を決める大切なものなので、初めて発行したり、改訂したりした際には、その内容について、しかるべき立場の方の承認が必要です。

c)について、
文書を改訂すると、「版」が変更になります。その文書が現在、第何版なのか、どの箇所をどのように改訂したのか(改訂履歴)を明確にしておきます。

h)について
廃止文書とは、もう使用しなくなった文書のことです。基本、廃棄して構わないのですが、重要なものには一定期間の保管義務があります。

例えば、製造中になった医療機器であっても、最終出荷後、耐用年数経過まで製造書類や検査記録を保管する必要があります。

【4.2.5】
先述の通り、仕事をきちんと実施した証拠として残す文書を“記録“を言います。

保管責任者(部署)、保管方法、保管場所、保管期間、保管期間が過ぎた後の廃棄時期・廃棄方法を、記録ごとに決めておきます。一覧表にまとめておくと良いでしょう。

第4段落の“記録の変更”とは、記録に誤りがあった場合の修正を指します。元の記載事項が識別できる修正方法を決めておきます。、

ISO13485取得のポイント

【必要な仕組み・ルール】
上述の通り。必要な記載事項については品質マニュアルに記載する。
文書管理、記録管理の方法(だれが、いつやるのか)を決め、品質マニュアルや手順書に記載する。

【品質マニュアルの記載例】

4.2 文書・記録
4.2.1 一般
当社は、次の文書を揃える。
a) 品質方針、品質目標
b) 品質マニュアル…

4.2.2 品質マニュアル
品質マニュアルには、次の事項を記載する。
a)…

4.2.3 医療機器ファイル
当社は、医療機器について、「製造標準書」を作成する。
「製造標準書」には、次の事項を含める。
a)…

4.2.4 文書管理
当社は、文書管理の手順を以下に定める。
(1) 文書の作成・承認…
(2) 文書の保管…
(3) 文書の配付…

4.2.5 記録管理
当社は、記録管理の手順を以下に定める。…

ご不明な点は、こちらからお問い合わせくだされば、喜んでお答えします。

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